リーグの公式アカウントが、自分でアップした動画を大慌てで消しました。写っていたのはペイジ・ベッカーズとエンジェル・リース。オールスターウィークエンドの場で、7月29日に組まれていたドリーム対ウィングス戦の勝敗をめぐって2人が400ドルとみられる私的な賭けをしていた、という話を本人たちが認める内容だったと報じられています。ファン同士の軽口なら微笑ましい話ですが、当事者は現役選手で、しかも公開したのはリーグ本体です。最初に感じたのは驚きよりも、「誰も止めなかったのか」という一点でした。
公式が上げて、公式が消した数十分
問題の動画は、ドリームとウィングスが激突する水曜の試合前にWNBA公式が投稿したものです。キャプションは笑いの絵文字つきで「We did?」、続けて「オールスターウィークエンドでエンジェル・リースと交わした今夜の試合の賭けについてのペイジ・ベッカーズ」という趣旨の文言が添えられていたと伝えられています。つまりリーグは、これを微笑ましい仲良しネタとして売り出そうとしたわけです。
ところが投稿からしばらく後、公式は動画を削除しました。当然ながら、その前にスクリーンショットや録画がSNS上に無数に拡散しています。Awful Announcingは「削除したのは、自分たちが何をしたのか気づいたからだろう」と書いています。金額は400ドル、日本円にすればおよそ6万円台。年俸も広告契約も桁が違う2人にとって、財布が痛む額ではまったくありません。だからこそ余計に、リーグの判断ミスだけが浮き上がる構図になりました。
「間接的に」までカバーする新CBAの文言
厄介なのは、これが単なる悪ノリで済まない規定の存在です。新しい労使協定の第5条(c)は、WNBAの試合の結果・スコア・その他あらゆる要素について金銭や価値あるものを賭けること、賭けを申し出ること、賭けを試みることを禁じています。しかも「直接的または間接的に」と明記されており、罰則はコミッショナーの単独裁量で罰金・出場停止・追放まで及ぶ、という書き方です。
つまり文面だけを機械的に読めば、額の大小や悪意の有無は関係ありません。北米プロスポーツ界では長年、選手が自分の試合に賭ける行為は「越えてはいけない線」として扱われてきました。近年は野球やバスケットボールで実際に賭博スキャンダルが起き、リーグ側は一貫して厳格な姿勢を打ち出してきた経緯もあります。今回は八百長でもオッズ操作でもなく、ライバル同士の軽い一杯賭けにすぎませんが、条文が想定する行為の定義には形式上ぴったり当てはまってしまうのです。
罰しても罰しなくても叩かれる、という詰み
ここからがキャシー・エンゲルバートにとっての本当の難所です。何もしなければ、「リーグは選手が自分の試合に賭けることを黙認した」と受け取られます。逆に重い罰金や出場停止を出せば、「自分で宣伝しておいて選手だけ処分するのか」という当然の反発が返ってきます。どちらを選んでも失点する、いわゆる無理ゲーです。
しかも今季のリーグは、オールスター周辺の混乱、シアトルでの一件をめぐる報道対応、そして2027年以降の自身の去就について明言を避けたコミッショナー本人の姿勢など、火種を抱えたまま後半戦に入っています。自ら火を起こしたのが今回だという点が、これまでの騒動と決定的に違うところです。個人的には、静かに内部注意で処理して条文の運用指針を整えるあたりが落としどころだと見ています。ただ、その「静かに」が今のWNBAでいちばん難しいのも事実でしょう。
賭けの結末と、8月2日の期限
肝心の試合はドリームが77-72で勝ちました。リースは12得点16リバウンドのダブルダブルで、うちオフェンスリバウンドは8本。ベッカーズは15得点3アシストでした。アリーシャ・グレイが26得点、ジョーディン・カナダが19得点7リバウンド5アシスト3スティールとドリームの勝ちを支え、ダラスはアリーケ・オグンボワレの20得点でも届きませんでした。額面通りに受け取るなら、400ドルはリースの側に転がった計算になります。ちなみにリースは対ベッカーズのキャリア対戦成績で無敗を維持したとも報じられています。
WNBAのトレード期限は8月2日です。プラムやアラナ・スミス、さらにはナフィーサ・コリアーの名前まで浮上している状況で、リーグとしてはコートの中の話題で上書きしたいところでしょう。この賭け動画にリーグがどんな説明を出すのか、あるいは出さないのか。数日のうちに答えが見えてきます。
引用:https://awfulannouncing.com/wnba/deletes-post-paige-bueckers-angel-reese-betting.html

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